公益社団法人有機合成化学協会 SSOCJ - The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan

豊かな明日を創る有機合成

平成26年度 前期(春季)有機合成化学講習会 開催報告

    

テーマ

-シリーズ 使える反応- 『使い方のコツから実用化まで-その2-』

主催

主催 有機合成化学協会/共催 日本化学会、日本薬学会、日本農芸化学会

日時

[終了]平成26年6月18日(水)~19日(木)

会場

(公社)日本薬学会長井記念館長井記念ホール

プログラム

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開催報告

    去る平成26年6月18日、19日の2日間、平成26年前期(春季)有機合成化学講習会が日本薬学会長井記念館長井記念ホールにて開催されました。
    今回の講習会では、これまで好評だった「使える反応」をシリーズ化し、大学および企業の第一線でご活躍の11名の先生方より最新のトピックスを加えながら、使い方、ノウハウを主眼に研究成果をご紹介いただきました。
    参加者は合計121名で、その内訳は、企業116名、大学・研究機関2名、学生3名でした。参加者のみなさまにはたっぷりと2日間、有機合成化学を堪能していただけたと思います。


第1日目

  • 第1日目、岡田稔事業委員長による開会の挨拶から本講習会がスタートしました。最初の講演は須貝威先生(慶應義塾大学薬学部)による「酵素触媒反応の取扱いと活用のコツ−これを知ればけっこう簡単!もっと活用しよう−」でした。内容は酵素反応の具体的な実験方法やトラブルシューティングにも及び、多くの実例を挙げて分かりやすく講義していただきました。純粋な鏡像異性体を調製するための、有力な方法を知ることができたと思います。

  • 2番目の講演者として柴田高範先生(早稲田大学理工学術院)が、「IrやRh触媒を用いた炭素−炭素結合反応−錯体調製から反応まで−」と題して講演されました。キラルな金属触媒を用いた付加環化反応により、全炭素四級不斉中心のみならず、軸不斉、面不斉、さらにはらせん不斉の高エナンチオ選択的な創製が可能になることが紹介され、当分野の最先端をうかがうことになりました。

  • ランチョンセミナー

    (昼食をとりながらスポンサー企業のショートプレゼンテーション)

    今回初めての試みとして、第1日目のお昼にランチョンセミナーが開催されました。昼食をとりながら、スポンサー企業のショートプレゼンテーションを聞いて頂く企画です。日本電子(株)からはアンビエント・イオン化法DARTを用いたマススペクトルについて、ロックウッドリチウムジャパン(株)からはバルク供給可能なリチウム試薬やGrignard試薬について紹介がありました。お弁当もおいしく、参加者からの反応はなかなか好評だったようです。

  • 午後は廣谷功先生(武蔵野大学薬学部)による「含窒素ヘテロ環化合物の合成法〜電子過剰系ヘテロ環化合物を中心に〜」で講習会を再開しました。これまでに報告されているインドール、ピロール、およびインダゾールの環合成に関して、反応のタイプ別に、それぞれの長所と短所も明確にしながらの講義でした。広範囲にわたる含窒素ヘテロ環構築法について、的確にまとめていただきました。

  • 4番目は企業からのご講演で「ピロロ[3,2-d]ピリミジン骨格を有するHER2/EGFRキナーゼ阻害薬のデザインと合成:新規バックポケットバインダーの探索」と題して川北洋一先生(武田薬品工業(株)医薬研究本部)からお話いただきました。新規キナーゼ阻害薬の創製を目的として化合物の最適化研究を行った後も、バックポケットバインダーに着目し、より強力な阻害活性を有する化合物を見出すに至った研究が紹介されました。

  • ブレイクをはさんでの講演は、佐治木弘尚先生(岐阜薬科大学薬品化学研究室)による「使える不均一系接触還元反応〜使い方の基本とノウハウ〜」でした。先生の研究グループで開発された様々な官能基選択的接触還元触媒の特性を、使い方のコツとともに教えていただきました。特に各種の触媒の活性をまとめた図はとてもインパクトが高く、印象に残るものでした。

  • 第1日目の最後は 髙井和彦先生(岡山大学大学院自然科学研究科)に「無機薬品はメーカー、ロットに気をつけよう−微量の不純物が反応を左右する?!」と題して講演をいただきました。クロム塩や金属亜鉛を用いる反応の開発において、実際に先生が経験してきたことが紹介されました。当時の様子をまるで昨日のことのようにお話いただき、聞いているほうもワクワクすると同時に、「再現性」について強く考えさせられる講義となりました。


  • <ミキサー&アフターディスカッション>(講師の先生方を交えて)

    第1日目の全ての講演が終了した後に、講師の先生方を交えてミキサー&アフターディスカッションが行われました。これは本講習会の恒例企画で、講師の先生方との十分なディスカッションや参加者間での情報交換、人脈・ネットワーク作りの時間となっており、大いに盛り上がりました。


第2日目

  • 第2日目のご講演は、細谷孝充先生(東京医科歯科大学生体材料工学研究所)からスタートし、「アジド基の使いこなし方:自在な分子連結に向けたクリック化学の新展開」という演題目どおり、クリック反応の歴史から始まって先生ご自身が最近展開されているアジド含有基質の高度なデザインや、それを用いての生体分子修飾等の結果について丁寧に解説いただきました。ケミカルバイオロジーの隆盛と相まって、アイデアひとつでユニークなケミストリーが展開できる分野であるように思われ、更なるご研究の発展が期待されます。

  • 2演題目は飯倉仁先生(中外製薬(株)研究本部創薬化学研究部)から「フッ素スキャン、窒素スキャンを用いた医薬品最適化」と題してご講演いただきました。実際に創薬の現場でご活躍されている先生の講演は臨場感あふれるもので、非選択的フッ素化反応を逆手に取ったフッ素スキャンの手法などを通じて化合物を磨いてゆく過程は、製薬企業からの参加者だけでなく、多くの方にとって刺激を受けることのできたご講演だったのではないでしょうか。

  • 昼食をはさんだ後は、阿部隆夫先生(Meiji Seika ファルマ(株)医薬研究所)から「経口カルバペネム(TBPM-PI)とβ-ラクタマーゼ阻害剤(SB-206999Z)のプロセス開発」の演題でご講演いただきました。当時医薬業界を席巻した合併、再編の荒波に翻弄されながらもOrapenemTMが上市までたどり着いたことは、地道な研究の積み重ねこそが我々研究者にとって最も大切な指針であることを再認識させるものであるといえます。

  • 当日4演題目となる発表は、濱田康正先生(千葉大学大学院薬学研究院)から「特異なアミノ酸を含む生物活性環状ペプチドの合成」の演題でご講演いただきました。ペプチドの環化は細胞膜透過性や酵素分解性など、従来のペプチド創薬における問題点を回避する方策として近年注目を集めています。先生のご講演ではパプアミドAやリディアマイシンAといった天然から単離された環状ペプチドの全合成研究を通じ、逆合成時の環化部位や縮合剤の選択など、合成上のコツといえる点をご紹介いただきました。

  • 本講習会の最後は山田徹先生(慶應義塾大学理工学部化学科)から「マイクロ波合成化学の新展開」と題してご講演いただきました。マイクロ波照射装置が有機合成に取り入れられてからすでに歳月が経過していますが、マイクロ波照射に伴う非熱的効果が存在するかどうかは今なお議論のあるところです。先生のご講演では、不斉反応系をプローブとして用いた、非熱的効果の存在を証明するためのいくつかの試みをご紹介くださいました。論文投稿時の採否におけるご苦労など、人並みならぬ熱意なしでは乗り越えられそうにないエピソードが印象的で、研究者として刺激を受けた受講者も多かったのではないでしょうか。

本講習会は、通常の学会やシンポジウムとは「一味違う講習会」として位置づけられており、春と秋の年2回開催しております。
他の学会と異なる点のひとつは、産学にまたがる広範な分野の第一線で活躍される研究者から、直接その研究内容を拝聴できることにあると考えられます。有機合成化学という一見限られた分野の中にあっても、最先端の研究における専門性は、反応開発や全合成、計算化学、高分子等、数限りなく細分化されていきます。また本講習会がお招きする講師の中には、機能性材料や創薬化学など、有機合成化学以外にもうひとつの専門分野を確立された方が多くおられます。本来なら分野外の演題は難解に過ぎ、30分から1時間にわたる講演で興味を維持するのは難しいところですが、聴衆と演者が互いに有機合成化学という背景を共有しているが故に分野を超えて理解できる部分が多く、2日間の聴講を通じて自らの持つ専門性の辺端部を押し広げることを可能としています。より深く有機合成化学を学ぶにせよ、別の分野へと興味を広げていくにせよ、本講習会はその契機を参加者に与えてくれる学会であるように思いました。
初日の講演後に設定されているミキサーは、企業からの参加者が多い本講習会が持つもうひとつの大事な側面です。仕事上、似たような苦労をすることが多く、本来共通の話題を多く持っているはずの同業他社の方と知り合う有効な機会でありますので、社交上手な方の多いアカデミアの先生方のみならず、企業からの参加者ももっと積極的に利用されると良いのかもしれません。

次回の有機合成講習会は11月20、21日の両日で開催予定です。多くの方の参加をお待ちしております。
<2014年度事業委員会委員>(慶大理工 高尾賢一)(第一三共(株)中村 毅)

その他,当日の会場の様子

ページ更新日
2014年8月18日