公益社団法人有機合成化学協会 SSOCJ - The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan

豊かな明日を創る有機合成

平成28年度 前期(春季)有機合成化学講習会 開催報告

    

テーマ

『有機合成化学が生みだす新世界―反応開発からもの創りまで』

主催

主催 有機合成化学協会
共催 日本化学会、日本薬学会、日本農芸化学会

日時

[終了]平成28年6月15日(水)~16日(木)

1日目10:00~19:45 /2日目 9:30~16:40

会場

(公社)日本薬学会長井記念館長井記念ホール
[東京都渋谷区渋谷2-12-15/TEL.03-3406-3326]

地図

プログラム

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開催報告

  通常の学会は最先端の研究成果が発表される場ですが、有機合成化学講習会は一味異なっています。参学の最先端で活躍する一流の講師をお招きし、ご自身の研究について、その領域全般の歴史的•理論的背景、着想の経緯を解説頂き、普段は言いにくい苦労話、ブレークスルー、最新の成果、利用上のノウハウまでを教えて頂きます。最先端の知識•技術を共有し、受講者の研究の進展につなげ、日本の有機合成化学の基盤を強固にしていくことを目的にしています。
  本講習会の大きな特長は、受講者のほとんどが企業の研究者であることです。受講者は事前に送付されるテキストを読み込み、重要な情報を聞き逃しまいと「身をのり出して」講習に聞き入り、メモを取ります。講演後は活発な質疑応答がなされ、休憩時間、講師の先生方の周りに受講者からの質問で人だかりができるほどです。1日目の講習会終了後はミキサー&アフターディスカッションの場が設けられ、質疑応答・休憩時間に質問できなかった参加者もお酒が少し入ったところで講師の先生方と議論を交わします。ミキサー&アフターディスカッションは受講者全員が参加でき、とても「コストパフォーマンスのよい会」であると好評です。
  今回の講習会はテーマを「有機合成化学が生みだす新世界 ―反応開発からもの創りまで―」とし、計算化学、反応開発、プロセス開発をはじめとするさまざまな領域で活躍する12名の先生方を産学からお招きしました。参加者は企業106名、学生2名の合計108名でした。多くの質問をして下さいました参加者の方々と、その質問に丁寧にお答え下さいました先生方のおかげをもちまして、本講習会がたいへん盛り上がりましたことに感謝致します。


第1日目

加藤昌宏事業委員長による開会のご挨拶からスタートしました。

  • 1番目は内山真伸先生(東大院薬/理研)による「理論計算と合成化学の融合による反応開発と機能創出(近赤外光利活用有機分子の創製)でした。計算化学の歴史的背景と基礎的な説明から始まり、計算化学を用いた天然物の生合成経路解明、理論計算と実験化学の融合による新反応開発などを詳細に講義していただきました。これまで計算化学に縁遠かった方も、これから使ってみよう、という気になったのではないかと感じました。

  • 2番目は生越専介先生(阪大院工)による「ニッケルと不飽和結合だけで組み上げる有機合成」でした。遷移金属触媒、特にニッケルとアルキンから生じるカルベン錯体についてお話しいただき、ニッケラサイクルを経由する多置換シクロヘキセンとシクロブテンの合成、分子内ヒドロアシル化を中心に、ニッケル触媒の特性を活かした反応開発についてご説明いただきました。


  • 3番目は、林良雄先生(東京薬大)による「ペプチド化学を基盤とする中分子創薬への展開―低分子薬Plinabulinから抗体薬物複合体(ADC)創薬への展開―」でした。ジスルフィド結合形成を活用する生理活性化合物の合成およびケミカルバイオロジーへの展開を中心に、中分子ペプチドに基づく創薬、大学発創薬の開発経緯についてご紹介いただきました。


  • 4番目は、西田晴行先生(武田薬品工業㈱)による「新規カリウム競合型アシッドブロッカー ボノブラザンフマル酸(タケキャブ®)の創製―究極の酸分泌抑制薬を目指して―」でした。既存のプロトンポンプ阻害薬の問題点とその解決方法、さまざまな試行錯誤から新薬を開発するに到るまでの経緯を詳しくご紹介いただきました。


  • 5番目は、中田雅久先生(早大理工)による「含中員環天然物の合成化学」でした。環形成が困難な中員環(8-11員環)の性質と世界中の研究者が挑戦した構築例をご紹介いただき、生理活性天然物の全合成に到るまでに遭遇した多くの困難と、それらを克服し望む天然物を合成した経緯について詳細にご講義いただきました。


  • 1日目の最後は、山本尚先生(中部大)による「触媒的不斉酸化反応」でした。ブレンステット酸、ルイス酸の開発とそれらを用いた立体選択的合成に始まり、ニトロソ化合物の化学、遠隔位の立体化学を制御する不斉酸化、エポキシドの開環をともなう光学活性アミノジオールの合成についてご講義頂きました。常に大きな目標を掲げ、情熱を持ち続ける先生の姿勢に感銘を受けました。

  • ランチョンセミナー

    • 今回もランチョンセミナーが開催されました。昼食をとりながらスポンサー企業のショートプレゼンテーションを聞いていただくスタイルでのセミナーで、日本電子㈱からは、DARTを用いたマススペクトル測定と重溶媒を用いないNMR測定の紹介が、ロックウッドリチウムジャパン㈱からは、アルキルリチウム、リチウムアミド、リチウムアルコキシドについての紹介がそれぞれありました。両社は展示スペースにも出展いただいており、そちらで更に詳しいお話を聞くことができました。


  • <ミキサー&アフターディスカッション>(講師の先生方を交えて)

    第1日目の全ての講習終了後、会場横のロビーにて講師の先生方を交えてミキサー&アフターディスカッションが行われました。これは本講習会の恒例企画で、2日間の講師がほぼ全員この場に参加されます。簡単な食事を取りながら、和気あいあいとした雰囲気で講師の先生方とのディスカッション、参加者間での情報交換、人脈・ネットワーク作りの時間として大いに盛り上がりました。

第2日目

第2日目は9:30開始でした。昨晩20時頃まで行われたミキサー&アフターディスカッションの疲れを見せることもなく、受講席は朝一からほぼ満席でした。

  • 1番目は寺田眞浩先生(東北大院理)による「キラルブレンステッド酸触媒を用いた不斉合成」でした。ビナフトール-リン酸系ブレンステッド酸触媒及びこれを用いた不斉マンニッヒ反応誕生の秘話から始まり、様々な反応(アザマイケル付加反応、求核置換反応etc)への展開とそれらの選択性発現のメカニズム解析及び、ブレンステッド酸強度向上への試みについてご講義頂きました。最後のスライドの“Work Hard, Play Hard”のメッセージが印象的でした。

  • 2番目は真鍋敬先生(静岡県大薬)による「安全・簡便・短工程有機合成を指向したPd触媒反応」でした。ギ酸フェニル類やN-ホルミルサッカリンを一酸化炭素発生源として用い、実験室で安全かつ簡便に行うことのできるカルボニル化反応及び、新規ホスフィン配位子DHTPを用いたフェノール等のオルト位選択的カップリング反応について解説して頂きました。前者については一酸化炭素そのものを用いるより高収率になることもあるとのことで、産業用途への応用が期待されます。

  • 3番目は森澤義富先生(旭硝子㈱)にる「フッ素化学基幹原料を用いる新しい分子変換反応」でした。 フッ素化学工業の基本フローから始まり、古典的な含フッ素モノマーや試薬の調製法や農薬等への応用例、近年確立された新手法として液相フッ素化反応の考え方と応用例、更に最新のケミストリーとしてTFEを用いたクロスカップリング反応やメタセシス反応等についてご講義頂きました。これらの反応を活用することにより新たな含フッ素スペシャリティーケミカルズが創出されることを期待します。

  • 4番目は海老原啓達先生(中外製薬㈱)による「FGFR(Fibroblast Growth Factor Receptor)阻害剤 CH5183284/Debio 1347の創製」でした。リード化合物の選定から最終候補化合物の絞込まで、主にFGFR阻害活性(主作用)とKDR阻害活性(副作用)とのディスクリ向上の観点で解説して頂きました。作用部位の相互作用の中身を精密に理解しながらロジカルに候補が絞り込まれていく様に感銘を受けました。


  • 5番目は浜地格先生(京大院工)による「生細胞有機化学によるタンパク質その場解析のための分子技術」でした。有機合成でタンパク質の特定の場所を修飾するための手法としてトシル法やアシルイミダゾール法を開発された経緯とそれらの応用(GABAやAMPA受容体近傍への蛍光ラベル化及びそれらを利用した創薬スクリーニングへの展開etc)について解説して頂きました。全く未開拓の境界領域に挑戦された先生の勇気と行動力に感銘を受けました。

  • 6番目は中村栄一先生(東大院理)による「化学:分子世界と実世界のかけ橋」でした。鉄道、模型作り、旅行、絵画、写真等々、様々なモノに興味を持たれていた先生が、1969年の特殊性故に向山・桑嶋先生と出会って有機化学に目覚め、“どんな趣味よりも面白い科学を実現する”との信念のもと、その後も様々な先生と出会い、刺激を受けながら多くの反応開発(フッ素アニオンを用いたアルドール反応~Fe触媒を用いた位置選択的Me化反応etc.)や現象解明(電子顕微鏡によるフラーレンの2量化観察etc.)をされた先生の研究半生について解説して頂きました。最後には素晴らしいフルート演奏まで聞かせて頂き、研究は言うまでもありませんが、先生のリベラルアーツ力の高さにも感服させられる講習でした。

最後は砂塚副事業委員長による閉会のご挨拶で終了しました。

<2016年度事業委員会委員>(慶大薬 庄司満)(富士フイルム 伊藤孝之)

その他,当日の会場の様子

講習会の受講風景

講習会の受講風景

ブレイクでの1コマ

ブレイクでの1コマ

併設展示会場での1コマ

併設展示会場での1コマ

ページ更新日
2016年08月03日