公益社団法人有機合成化学協会 SSOCJ - The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan

豊かな明日を創る有機合成

シニア懇話会「第19回ゆうごう会」【開催報告】

シニア懇話会「第19回ゆうごう会」【開催報告】
主催

有機合成化学協会

日時

[終了]平成28年6月22日(水)15:00~18:30頃

場所

化学会館5F501A会議室[千代田区神田駿河台1-5/TEL.03-3292-7621(有合化事務局)]

交通

JR中央線・総武線「御茶ノ水」駅、御茶ノ水橋口より徒歩5分

参加費

5,000円 ※当日会場にて参加費を申し受けます。

参加者

24名

プログラム[15:00~16:30ごろ]

話題提供:「真実を知るのは簡単ではない —フェロモン研究を中心に—」

(東洋合成工業㈱顧問/日本学士院会員/東京大学名誉教授)  森 謙治 先生

生物は長年の進化により、きわめて強い活性を示す化合物を選択してフェロモンのような生物活性物質として用いている。それだから天然フェロモンは最強であり、活性を示す唯一の立体異性体のみから成っている。この考えの正しくないことが、化学合成法と分析法の進歩により証明されたいきさつを語る。

報告記

本会シニア会員向けの企画である「ゆうごう会」が平成28年6月22日(水)の午後、化学会館5階会議室で開催されました。ゆうごう会は、東京、大阪あるいは名古屋で年2回程度開催され、今回で19回目を迎えました。
今回は、学士院会員・東京大学名誉教授・本会元会長の森 謙治先生をお招きして「真実を知るのは簡単ではない-フェロモン研究を中心に」という演題でご講演を頂きました。
ゆうごう会は毎回常連の参加者が多く、旧知のシニア会員の再会の場でもあり、和気あいあいとした肩肘を張らない雰囲気が特徴です。今回も講演会に先立ち、参加者全員より近況報告、初めて参加の方には自己紹介をして頂き「ゆうごう会」が始まりました。引き続き、いつもながらの年齢を感じさせない歯切れ良い美声で、森先生のお話が始まりました。まず後に伝説上のご業績となった、先生の若かりし頃の「植物ホルモン、ジベレリンA4の全合成」が、その後の先生の研究者の有り様に大きな影響を与えた、というエピソードが紹介されました。 当日、森先生は70枚近いスライド(多くの構造式が盛り込まれたパワ―ポイント!)を用意されておられました。 
その日のご講演の内容を大別すると、次のものでした。対象となる生物活性物質に関して、1)いかにしてその構造を知るか、2)その正しい立体構造は?、3)天然に存在する立体異性体が最強の生物活性を示す?、4)正しい構造であると主張する必要条件は?、そして5)正しい構造を知ってどんな未来が拓けるか? 
最初の話題は、最近のご研究である、HeLa細胞に対する抗腫瘍活性を示す海綿由来の天然物Miyakosyne Aの全合成と、提唱されていた構造の修正に関するものでした。X線解析にて立体構造が提唱された天然物に存在する中心性キラリティを、立体異性体の合成も併せた合成研究を通して詳細に調べ、その絶対立体化学を修正されたご業績はまさしく天然物合成の真骨頂でした。引き続き、当日のご講演の中心となったお話は、ご存じ「昆虫フェロモンの合成」に関するもので、膨大な過去のお仕事の中からいくつかを紹介頂きました。
1973年のカツオブシムシフェロモンの絶対立体化学の決定、引き続きexo-ブレビコミンの両鏡像体の合成とそれらのフェロモン活性の確認、様々な昆虫フェロモンの鏡像体(立体異性体)の合成と、それらのフェロモン活性に関する多くの例が紹介されました。なかでも両鏡像体が存在してはじめて昆虫フェロモン活性(例えば集合フェロモン活性)を示す例や、片方の鏡像体がフェロモン活性を阻害する例、必ずしも天然型エナンチオマーが最強の生物活性を持つわけではない例など、常識を超えた自然界の不可思議さを教えて頂きました。ショウジョウバエの分泌するオス忌避フェロモンの全合成、立体異性体の合成を通しての天然物の立体化学の決定、および立体異性体のフェロモン活性の比較などの話題も提供頂きました。さらには、ショウジョウバエが分泌するトリグリセリド誘導体(異なるトリアシル化体)の合成と、精密なスペクトル解析による構造決定のお話などは、微量物質の構造決定の難しさを痛感させられました。 
最後の話題として、合成されたフェロモン類の社会生活への応用の一例として、害虫トラップの実例も紹介されました。森先生の昆虫フェロモンに関する有機化学的、生物化学的ご研究の多くは鎖状化合物が対象でしたが、当日、先生はごく最近の炭素環状骨格の昆虫性フェロモンの合成研究の一端も紹介されました。そして、全炭素置換された不斉四級炭素の構築に注力された、数多くの研究成果が紹介されました。東京大学を定年退官されたのちも東京理科大学の教員として、その後も理研の研究員として、そして現在は東洋合成工業(株)の顧問として、今なお現役で、しかも共同研究者を持たずに研究者生活を送っておられる森 謙治先生の活力に、参加者揃って驚嘆しました。1時間20分近い講演を一気にこなされたパワ-にも圧倒された次第です。その後、会場からの質問にも丁寧に回答されておられました。
講演会終了後は平岡哲夫さま(THS 研究所代表)に乾杯のご発声を頂き、懇親会に移りました。1時間半あまりでしたが、参加者全員にとって密度の濃い思い出深い懇親の場となったはずです。最近の有機合成化学の潮流に関すること、協会の現在の有り様、将来への期待などと話題に事欠くことなく、そこかしこで話に花が咲いていました。名残り惜しさを残しながら、午後6時30分過ぎに散会となりました。 次回は是非ご常連に加えて、初めて参加される方にも「ゆうごう会」の雰囲気に浸って頂きたいと思っています。協会に関わった多くのシニア世代の方々のご参加を、心よりお待ち致しております。

<第19回報告記>
只野金一

≪ゆうごう会≫とは

本会シニア世代個人会員を対象にした懇話会で、「少し学び(知る)、知的に(遊ぶ)、それを心でつなぎ(和の心)、誰でも気楽に参加し、楽しめる会」を趣旨とし、会の名称も、有合協と和の精神(融合)を意味する「ゆうごう会」と命名したものです。

講師の森 謙治先生(東洋合成工業顧問/日本学士院会員/東大名誉教授)

講師の森 謙治先生(東洋合成工業顧問/日本学士院会員/東大名誉教授)

冒頭、開会のご挨拶をされたゆうごう会お世話役の只野金一先生(慶大名誉教授)

冒頭、開会のご挨拶をされたゆうごう会お世話役の只野金一先生(慶大名誉教授)

乾杯のご発声をされた平岡哲夫先生(THS研究所)

乾杯のご発声をされた平岡哲夫先生(THS研究所)

村木 繁氏(元高砂香料工業)

村木 繁氏(元高砂香料工業)

池上四郎先生(帝京大名誉教授)

池上四郎先生(帝京大名誉教授)

今本恒雄先生(千葉大名誉教授)

今本恒雄先生(千葉大名誉教授)

講演の部の1コマ

講演の部の1コマ

(左から)関根光雄先生(東工大名誉教授)、井澤邦輔氏(ゆうごう会世話役/浜理薬品工業)

(左から)関根光雄先生(東工大名誉教授)、井澤邦輔氏(ゆうごう会世話役/浜理薬品工業)

森謙治先生を囲んで(左)木村正輝氏(東洋合成工業)、(右)中川昌子先生(千葉大名誉教授)

森謙治先生を囲んで(左)木村正輝氏(東洋合成工業)、(右)中川昌子先生(千葉大名誉教授)

(左から)北原 武先生(ゆうごう会世話役/東大名誉教授)、須貝 威先生(慶大薬)

(左から)北原 武先生(ゆうごう会世話役/東大名誉教授)、平岡哲夫先生(前出)、須貝 威先生(慶大薬)

(左から)今木 直氏(ゆうごう会世話役/元三菱化学)、佐々木博朗氏(ゆうごう会世話役/元東ソー)

(左から)今木 直氏(ゆうごう会世話役/元三菱化学)、佐々木博朗氏(ゆうごう会世話役/元東ソー)

(左から)中川淑郎先生(横浜市立大学名誉教授)、東海林義和氏(日本総合技術研究所)

(左から)中川淑郎先生(横浜市立大学名誉教授)、東海林義和氏(日本総合技術研究所)

(左から)梶 英輔先生(北里大名誉教授)、只野金一先生(前出)

(左から)梶 英輔先生(北里大名誉教授)、只野金一先生(前出)

(左から)辻 二郎先生(東工大栄誉教授)、福山 透先生(名大院創薬科学)

(左から)辻 二郎先生(東工大栄誉教授)、福山 透先生(名大院創薬科学)

(左から)小林進先生(東京理大名誉教授)、奈良坂紘一先生(東大名誉教授)、渥美國夫氏(Meiji Seikaファルマ)

(左から)小林 進先生(東京理大名誉教授)、奈良坂紘一先生(東大名誉教授)、渥美國夫氏(Meiji Seikaファルマ)

6776(左から)藤田眞作先生(湘南情報数理化学研究所)、猪居 武氏(元チッソ)

6776(左から)藤田眞作先生(湘南情報数理化学研究所)、猪居 武氏(元チッソ)

お問い合わせ

〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-5 化学会館
公益社団法人有機合成化学協会「ゆうごう会」係
(電話 03-3292-7621)(FAX 03-3292-7622)
e-mail : syn.org.chem@tokyo.email.ne.jp

ページ更新日
2016年08月12日