公益社団法人有機合成化学協会 SSOCJ - The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan

豊かな明日を創る有機合成

巻頭言

素晴らしい系譜を踏み台に
甲斐 學


 この度,はからずも野依良治先生から有機合成化学協会の会長を引き継ぐことになりました。この協会は昭和17年(1942年),第二次世界大戦のさなかに通商産業省のご指導のもとに設立され今年で57歳になります。

 戦争という非常時にあって,自然を対象とする理学と,人間を対象とする工学と,社会を対象とする企業が渾然一体,融合し,国益のために尽くし素晴らしい成果をあげていた頃で,協業と言う視点からは極めて良い環境の中で誕生したわけです。

 そしてこの協会は,戦に敗れた1945年から今日までの54年間,荒廃した我が国をここまで豊かにするための大切な技術基盤の1つとしての有機合成化学を,名実ともに世界の牽引車となるまでに成長させる原動力になりました。

 その間に石炭化学から,石油化学,そしてC1化学へと有機工業化学の原料はめまぐるしく変わってきました。今は有用な生理活性物質を合成するための精密有機合成が主流のようにみかけられます。

 素晴らしい氏と育ち(系譜と文化)を持った専門学会であると誇りに思っております。

 諸先輩のご努力,ご功績に感謝申し上げるとともに,21世紀への架け橋と言える期間の,1999年2月から2001年2月までを,第35代の会長として本協会を担当させていただく責任を痛感いたしております。

 今,世界は混沌と激動のただなかにあり,世紀末とはこういうものなのかと思い知らされる状況です。  新しい世紀に向けて,産,官,学が一体となって新しい価値観のもとで,新しい秩序を確立しなければなりません。

 この協会は個人会員の寄与が大変大きいことが特徴であります。

 協会の求心力として大切な「有機合成化学協会誌」は,編集委員の先生方のご努力のおかげで,立派にその役割を果たしてくれているようです。限りなく一次情報に近い,読みやすい二次情報を追い求めてさらに親しみやすく,役に立つ会誌になればと願っております。その興味の対象として‘合成化学そのもの’と‘つくられた物’との間をどうバランスさせるかは,折りに触れ考えていかなければならないと思っております。

 一見,反応しそうにもないけれども,工業的に大切な反応をシンプルに,マイルドな条件で効率よく進めるための研究はもっともっとなされるべきではないでしょうか。環境を守るための有機合成化学あるいは‘有機分解化学反応’についても積極的なアプローチが必要だと思っています。

 協会の活性化は支部活動の充実にあると信じております。他の学会や協会に比べると今でも私達の支部活動は活発だと思っておりますが,支部どうしの連携の在り方をも含めて,さらなる工夫を地道に続けていきたいと考えております。また若い方々がそこへどれだけ主体的に参加していただけるかどうかに協会の将来がかかっております。若い会員にメンバーシップを誇りにしていただけるようにするための在り方について十分意見交換してみたいし,できることから実行してみる所存です。

 協会の活動に機動性を持たせるために,自己完結型を排して,関わりのある学会や,協会に積極的に働きかけて良い協業をして行きたいとも考えております。

 小人数で会員に行き届いたサービスをするために,大変頑張ってくださっている事務局を,かたちを整えて次世代に引き継いで行くことも私達にとって大切な課題であります。

 これらのことを推し進めていくために,財政がどうあるべきかについても良く考えてみなければなりません。

 リアルタイムのコミュニケーションのためにインターネットのホームページもおいおい充実されることでしょう。  実状を十分認識できていないままに,あれこれと申し上げました。

 会員の,会員による,会員のための有機合成化学協会にするために,基本的には,会員全員の参加を前提にした,侃侃請謁の実りある対話と意見交換を拠り所として会の運営をはかっていきたいと考えております。

 宜しくご協力,ご支援のほどお願い申し上げます。


(平成11年2月12日受理)
ページ更新日
2012年4月17日