第39回有機合成化学セミナー

プログラム

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※M:Mukaiyama Award 受賞講演、L:Lectureship受賞講演、I:招待講演、A:奨励賞受賞講演[敬称略]
☆開会挨拶 

9月20日(水)

I-1
(13:10-14:00)
「キラル分子科学の新局面」
友岡 克彦(九州大学先導物質化学研究所・教授)
本講演では、特異なキラル分子である「キラルケイ素分子」と「動的面不斉ヘテロ中員環分子」についてそれらの特性を紹介するとともに新しいキラル技術の基としての科学的、技術的意義をご紹介する。また、キラル分子を光学活性体として得る新手法である動的不斉誘起法(DYASIN)の原理と実例をご紹介する。
I-2
(14:00-14:50)
「触媒開発で拓くキラルフッ素含有化合物の合成」
濱島 義隆(静岡県立大学薬学部・教授)
アルケンのハロゲン化は、多官能性分子を簡便に与える基本的な反応である。過去10年間に不斉ハロゲン化が急速に発展したが、カルボニル化合物のα位フッ素化に比べアルケンの不斉フッ素化は立遅れている。有機フッ素化合物は医薬・農薬などの分野において有用であるため、炭素-炭素二重結合の不斉フッ素化は様々な分子を合成する手段として興味深い。本発表では、独自に開発した不斉有機触媒を利用するフッ素化合物の合成についてお話ししたい。
I-3
(15:00-15:50)
「可視光ペルフルオロアルキル化反応の開発とその展開」
矢島 知子(お茶の水女子大学理学部・教授)
可視光反応は近年爆発的な進歩を遂げている。私たちは、光を用いたペルフルオロアルキル基の導入反応の開発を一貫して行ってきた。本講演では、私たちの行ってきた紫外光反応から可視光ペルフルオロアルキル化への歩みを基に、さまざまな活性化手法による電子移動反応の理解を深めてもらいたい。また、この反応を利用した高分子化合物の合成への展開についても紹介する。
I-4
(15:50-16:40)
「ポルフィリンの新合成化学と機能探求:反芳香族ポルフィリンの化学」
忍久保 洋(名古屋大学大学院工学研究科・教授)
ポルフィリン類縁体は魅力的な光学・電気化学特性を示すため、広く研究されてきた。我々は金属テンプレートを用いた合成法を開拓することで、反芳香族分子であるノルコロールを合成することに成功した。ノルコロールは、芳香族化合物であるポルフィリンとは大きく異なる性質を示す。本講演では、ノルコロールの特異な機能性や反応性について述べる。また、近接積層したノルコロールが芳香族性を発現する現象について最近の進展を紹介する。
M-1
(17:00-18:00)
「Necessity is the Mother of Invention: Natural Products and the Chemistry They Inspire」
Sarah E. Reisman (California Institute of Technology)
The chemical synthesis of natural products provides an exciting platform from which to conduct fundamental research in chemistry and biology. Our group is currently pursuing the synthesis of several structurally complex natural products, with a particular focus on the development of new convergent fragment coupling and annulation strategies. The densely packed arrays of heteroatoms and stereogenic centers that constitute these polycyclic targets challenge the limits of current technology and inspire the development of new synthetic strategies and tactics. This seminar will describe the latest progress in our target-directed synthesis and reaction development efforts.

9月21日(木)

A-1
(9:00-9:40)
「実践的合成法開発による機能性有機ヒ素化学の展開」
井本 裕顕(京都工芸繊維大学分子化学系・准教授)
有機ヒ素化学は、実用的な合成法が確立されていなかったために実験研究がほとんど進められてこなかった。本講演では、これまでに我々が開発した実践的な合成ルートと、それらを活用して得られた有機ヒ素化合物や金属錯体の構造・機能・反応性などを紹介する。そして、ヒ素によってもたらされる機能性有機化学の新しい展開について解説する。
A-2
(9:40-10:20)
「脱芳香族化反応を活用した多環性縮環型アルカロイド類の合成研究」
小田木 陽(東京農工大学大学院工学研究院・助教)
自然界からは、高度に官能基化された多環縮環型骨格を有する天然物が数多く見出されており、これら化合物群を効率的に合成可能な新規合成戦略の確立が求められている。本研究では、フェノール類の脱芳香族化を伴う酸化的環化反応と、生じたジエノンに対する位置選択的な分子内アザーマイケル反応を利用した、非環状化合物から多環縮環構造を効率的に構築する戦略に立脚した多環性縮環型アルカロイド類の全合成研究を行なった。
A-3
(10:20-11:00)
「金属種を活用した奇数員環構築が拓く新しい非交互炭化水素類の合成と機能解明」
小西 彬仁(大阪大学大学院工学研究科・助教)
特異な電子構造や新しい分子構造をもつπ電子系の創出は、基礎学術的な興味はもとより、有機材料の飛躍的な性能向上に直結し、極めて重要な課題である。π電子系を構築する有用な反応が多数開発されている今日においても、非交互炭化水素骨格を特徴付ける共役奇数員環(5-7、5-5、7-7員環)の構築は難しく、本分野発展の大きな妨げとなってきた。本講演では、効率合成法の開発に基づく新しい非交互炭化水素類の創成と、合成した分子骨格に宿る電子状態の詳細解明と機能展開について紹介する。
A-4
(11:10-11:50)
m-キノジメタンを基盤とする縮合多環ジラジカルの創出」
清水 章弘(大阪大学大学院基礎工学研究科・准教授)
2つの不対電子の相互作用を制御することは、基底スピン多重度の異なるジラジカルを創出し、特異な電子状態や物性を発現させるために重要である。また、ジラジカルは不安定な化学種であるため、かさ高い置換基を適切な位置に導入する方法や、精製が容易な発生方法の開発も必要である。本講演では、m-キノジメタンを基盤とする基底一重項および基底三重項の縮合多環ジラジカルの合成と単離および電子状態と基礎的物性について紹介する。
A-5
(11:50-12:30)
「複合糖質の化学合成が拓く細菌‐宿主間ケミカルエコロジー」
下山 敦史(大阪大学大学院理学研究科・助教)
細菌由来複合糖質リポ多糖とその活性中心リピドAについて、構造と免疫機能の相関を解明してきた。「共進化を遂げた寄生・共生菌成分は低毒性で宿主免疫を適度に調節する」と考え、寄生・共生菌リピドAの合成戦略をマイクロフロー系反応なども利用し確立した。リピドA構造の差異により細菌が宿主免疫を制御していることを明らかにし、免疫制御および共生現象の分子基盤解明を進めるとともに、得られた知見を安全で有用なアジュバント開発に展開した。
ポスターセッション(3:30-15:30)
I-5
(15:40-16:30)
「四座PNNP配位子に支持された3d金属錯体を用いた結合切断反応とその応用」
中島 裕美子(東京工業大学物質理工学院・教授)
強い電子供与性を示す平面四座PNNP配位子(2,9-bis((diphenylphosphino)methyl)-1,10-phenanthroline)に支持された3d金属錯体は、金属中心を電子豊富に保つことで、様々な結合の切断反応に有効に働く。例えば、[{Fe(PNNP)}2(μ-N2)]は強固なSi-Cl結合を、[CoCl(PNNP)]は塩基存在下でC-X結合やエステルのβ位C-O結合を切断する。以上の反応では、基質への効率的な一電子移動を鍵として進行し、系中で対応するラジカル種が生成することを見出した。発表では、これらの素反応を活かした触媒反応についても議論する。
I-6
(16:30-17:20)
「SHIONOGIにおける感染症治療薬のプロセス開発の事例紹介」
釣谷 孝之(塩野義製薬株式会社研究本部製薬研究所・所長)
医薬品の製造法を考える上で留意する要件にSELECT(Safety, Environment, Legal, Economy, Control, Throughput)がある。創薬段階で数百gスケールでは合成可能な合成法を数十から数百kgスケールにスケールアップして製造する際の課題と課題の解決方法について、当社にて近年 プロセス開発を実施した感染症治療薬の製造法開発の事例を通してSELECTの観点から説明する。
L-1
(17:30-18:30)
「Recent Adventures in Catalysis and Beyond」
Bill Morandi (ETH Zürich)
In this presentation, the concept of shuttle catalysis will be introduced and several recent examples of such reactions, including their application to synthesis and waste valorization, will be presented. Next, another emerging class of reversible transformations, single-bond metathesis, will be presented including new catalytic methods as well as their application to materials science. This will be complemented by some examples of novel molecular editing reactions.

9月22日(金)

I-7
(9:00-9:50)
「芳香環の高エナンチオ選択的水素化」
桑野 良一(九州大学大学院理学研究院・教授)
芳香環の不飽和結合は大きな共鳴安定化を受けているため、その脱芳香族化を伴う反応は大きなエネルギーを必要とし、精密な反応制御が困難であると考えられていた。しかし、現在ではこのような反応でもエナンチオ選択性を高度に制御することが可能になっている。本講演では、最も基本的な脱芳香族化反応である水素化について、演者が行ってきた研究について紹介する。
I-8
(9:50-10:40)
「芳香環構築によるキラルナノカーボンの触媒的不斉合成」
田中 健(東京工業大学物質理工学院・教授)
芳香環が連なったπ共役分子は次世代有機エレクトロニクス材料への応用が期待され、合成法開発が活発に研究されてきた。芳香環の配列や置換基により非中心不斉が生じるとキラル分子となり、その分子不斉に基づく化学的・物理的機能が期待される。しかし、非中心不斉の制御は中心不斉の制御に比べ著しく遅れていた。本講演では、触媒的不斉[2+2+2]付加環化反応による非中心不斉構築法について、最新の成果を含め発表する。
M-2
(10:50-11:50)
「特殊ヘテロ環の化学」
熊谷 直哉(慶應義塾大学薬学部・教授)
分子の物理化学的特性は、その分子に内在する原子・官能基固有の相加的な性質のみならず、それらの相関的位置関係により相乗的に規定されている。本講演では、我々の研究室でデザイン・合成している特徴的なヘテロ環化合物を示し、その触媒機能・物理化学的特性・光物性などについて、化学構造と関連付けて紹介する。
☆ポスター賞表彰 & 閉会式(11:50-12:10)

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