第37回有機合成化学セミナー

プログラム ※ (順不同)詳細決定後、改めてプログラム(ご講演日程等)を掲載いたします

※MukaiyamaAward=Mと略記、Lectureship=L、奨励賞受賞講演=A、招待講演=I[敬称略]

M-1 Professor Melanie S. Sanford
(Department of Chemistry, University of Michigan, Ann Arbor, U.S.A.)
 
M-2 ラジカル制御型有機触媒
大宮 寛久 (金沢大学医薬保健研究域薬学系教授)
有機化合物のみで構成される有機触媒は、環境調和・省資源・省エネルギーを目指す現代社会の要求に応える物質生産技術といえる。しかし、従来の有機触媒の殆どは、2電子移動を伴う反応しか制御できないため、適用できる反応形式が制限されている。我々は、1電子移動を伴うラジカル反応を有機触媒によって実現すべく研究を展開している。含窒素複素環カルベン触媒や有機硫黄光触媒のような有機触媒を設計することにより、ラジカルを制御し、新しい結合形成反応を開発した。
L-1 Amping Up Organic Synthesis with Electricity:An Electrocatalytic Approach to Reaction Discovery
Assistant Professor Song Lin (Cornell University)
Owing to its many distinct characteristics, electrochemistry represents an attractive approach to discovering new reactions and meeting the prevailing trends in organic synthesis. In particular, electrocatalysis—a process that integrates electrochemistry and small-molecule catalysis—has the potential to substantially improve the scope of synthetic electrochemistry and provide a wide range of useful transformations. In the past few years, we developed a new catalytic approach that combines electrochemistry and redox-metal catalysis for the functionalization of alkenes. This talk details our design principle underpinning the development of electrocatalytic alkene difunctionalization and hydrofunctionalization with a particular emphasis on enantioselective electrocatalysis. In addition, our recent forays into electrophotocatalysis will be discussed, in which we harness the power of both electricity and light to access catalytic species with exceptionally high oxidizing or reducing potentials.
招待講演I-1 HIV-1インテグラーゼ阻害薬ドルテグラビルナトリウムの効率的合成法の開発
安酸 達郎 (塩野義製薬株式会社CMC研究本部 製薬研究所プロセス化学部門長)
ドルテグラビルナトリウムは HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の増殖にかかわる酵素であるインテグラーゼの阻害を作用機序とする抗HIV感染症薬である。創薬段階での合成法は収率や反応条件の点で大量合成への適用が困難であったことから、スケールアップ可能な合成法開発が必須であった。検討の結果,以下の二つの合成法、すなわち原料の酸化反応と気液反応を鍵反応とする合成法、および原料をゼロベースで見直した短工程かつ高収率で原子効率に優れた合成法を確立した。本講演では合成法開発のコンセプトとその詳細について紹介する。
I-2 生物機能の解明を目指した天然物の網羅的合成
西川 俊夫 (名古屋大学大学院生命農学研究科教授)
天然物の示す特異で強力な生物活性は、創薬の場だけでなくライフサイエンスの発展にも大きな役割を果たしてきた。我々は、この天然物の持つポテンシャルを最大限活用するために、新たなユニークな生物機能の探索を目的として、関連化合物の網羅的な合成研究を展開している。このセミナーでは、海産天然物テトロドトキシン、アプリシアトキシン・オシラトキシンなどに関する網羅的合成と、状況が許せば生物活性についても紹介したい。
I-3 計算化学から着想した新しい機能性化合物の開発と実用化
北 弘志(コニカミノルタ株式会社技術フェロー 開発統括本部要素技術開発センター長)
我々企業の研究開発では、おおよそ達成不可能と思われるような高い性能を突きつけられる場面にしばしば出くわす。過去の知見や論理的な仮説に基づいて解決するのが王道であり、本来の姿ではあるが、思いがけなくも計算化学から気づかされ、そこから実用に至った機能性化合物の開発も経験してきた。本報では、カラー写真の高耐光性色素と有機ELの青色りん光材料の2つについて、その実例を解説する。
I-4 水素結合を戦略的相互作用とする有機分子触媒の創製~強酸・強塩基への展開~
寺田 眞浩(東北大学大学院理学研究科 教授(理学研究科長・理学部長))
ブレンステッド酸は有機合成反応において汎用性の高い触媒として古くから用いられているが、我々の研究室では、その機能化を目的として基質認識能、つまり不斉認識を可能とするキラルリン酸触媒の開発に長らく取り組んできた。これまで多彩な分子変換反応の不斉触媒化に用いられてきたが、ここではその適用範囲の拡充を目的とした強酸性キラルブレンステッド酸触媒の開発について紹介したい。また、併せて、近年開発研究を進めている塩基性有機分子触媒の強塩基化についても、その触媒分子設計のコンセプトから紹介したい。
I-5 結晶スポンジ法:有機合成,天然物化学,創薬研究への応用
藤田 誠(東京大学大学院工学研究科 教授)
結晶スポンジ法は、細孔性の金属錯体単結晶に対象試料を溶液状態から吸蔵させ、錯体の細孔を鋳型として吸蔵された試料化合物の周期配列を作り出す手法で、結晶化の工程を経ることなく低分子のX線回折の測定を行える。1μm角程度の微小な結晶1粒を用いて回折実験を行えることから、この測定に必要な試料の量をナノからマイクログラムオーダーである。本講演では、この特徴は,天然化合物の構造決定から創薬研究への応用まで、最新の展開を述べる。
I-6 リン原子、硫黄原子が鍵となる反応開発、機能性分子開拓
村井 利昭 (岐阜大学工学部化学・生命工学科 教授)
周期表第三周期以降の元素を組み込んだ有機化合物は、それらの元素の原子軌道エネルギー準位や電気陰性度に依存した特異的な安定性や反応様式を示す。例えば形式上のP=S基はP=Oに比べて分極の程度は小さく反応性も低下する。このような背景の中われわれは、 C=S基が鍵となる炭素結合形成反応に基づく新たな発光化合物群を創製し、またビナフチル基の軸性キラリティーがリン原子の中心性キラリティーに転写する反応を発見した。ここではこれらの反応の発見に至った経緯と最新の成果について述べる。
I-7 光エネルギーを促進力として利用する合成反応
村上 正浩(京都大学大学院工学研究科 教授)
熱反応はエネルギー的に安定な方向にのみ進行し得る。一方光反応では、出発物が一旦光エネルギーを吸収するので、最終的により不安定な生成物へと導くことが可能である。この点に着目して、光エネルギーを化学エネルギーとして蓄える(光合成の明反応に対応する)段階と、蓄えた化学エネルギーを利用して目的の変換を行う(光合成の暗反応に対応する)段階の、二つの段階からなる合成反応を開発してきた。それらについて紹介する。
A-1 N-混乱ポルフィリノイドを基体とする近赤外光機能性色素の創製
石田 真敏(九州大学大学院工学研究院応用化学部門 助教)
本講演では、天然色素として知られるポルフィリン系化合物の特異な環状π共役骨格の修飾法に着目し、環を構成する一部のピロール環の連結様式(α-α結合→α―β結合)を切り替える修飾戦略、「N-混乱法」による多様なポルフィリノイド(ポルフィリン類縁体)色素の創製について紹介する。混乱ピロールの数や位置、環サイズを系統的に変化させることで、金属錯形成によって特徴のある近赤外光物性・機能を示す分子群の構造と物性について議論する。
A-2 固体および分子の空間特性を活かした遷移金属錯体触媒の設計
岩井 智弘(東京大学大学院総合文化研究科 講師)
遷移金属錯体触媒では、望みの化学反応の実現には支持配位子による反応場の制御が重要である。合成化学を革新する高性能触媒の創製には新しいコンセプトに基づく配位子設計が必要であるという考えのもと、演者らは、固体や分子が創る空間特性を活かした独自の配位子開発に取り組んできた。本講演では、高分子効果や遠隔立体効果を利用した配位子設計とその触媒利用について紹介する。
A-3 スルホニル基の特性を活かした新規分子構築法の開発
南保 正和(名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所 特任講師)
有機硫黄化合物の1つであるスルホンは古くから有機合成に活用されてきた有用分子群である。我々はスルホニル基の特性、すなわち強い電子求引性と脱離基としての性質に着目した新しい分子変換反応を開拓してきた。特に反応性の乏しい炭素–スルホニル結合を如何に活性化するかに焦点を当て、新触媒や反応剤の開発のみならずスルホニル基の特性を引き出す独自の分子設計によって多様な分子群の自在構築が実現可能であることを見出した。本講演では最近の主な研究成果について紹介する。
A-4 高周期典型金属の2つの特性「中程度ルイス酸性」と「π電子親和性」を活かした有機金属化合物の合成
西本 能弘(大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻 准教授)
炭素-炭素多重結合へのカルボメタル化は炭素骨格を拡張しつつ炭素-金属結合を形成できる有用な反応である。我々は高周期典型金属の「中程度のルイス酸性」と「高いπ電子親和性」の二つの特性に着目して研究を進め、これら二つの特性を兼ね備えたインジウム、ガリウムおよびビスマスの典型金属塩を用いた新規カルボメタル化の確立を行ってきた。典型金属塩を直接利用したカルボメタル化およびヘテロメタル化による高度に官能基化された有機金属化合物の合成法の確立とそれらの有機合成反応への展開について紹介する。
A-5 無保護ケチミンを活用した環境調和型新規触媒的含窒素化合物合成手法の開発
森本 浩之(九州大学大学院薬学研究院 講師)
ケトン由来のイミンであるケチミンに対する触媒的求核付加反応は、四置換炭素を有する含窒素有機化合物を効率的に合成可能な有用な手法である。しかし、従来は窒素原子上に保護基を有するケチミンが主に用いられており、無保護の生成物を得るには脱保護工程が必要な点に改善の余地を残していた。本講演では、窒素原子上に保護基を持たない無保護ケチミンに着目し、無保護の含窒素有機化合物を直接供給可能な環境調和型新規触媒的合成手法を開発したので、その詳細について発表する。