イベント - 協会本部 –
第113回有機合成シンポジウム2018年【春】[開催報告] 終了しました
- 日時
- 平成30年6月6日(水)~7日(木)
- 場所
- 名古屋大学坂田・平田ホール
- 主催
- 有機合成化学協会、共催:日本化学会、日本薬学会、日本農芸化学会
開催報告
有機合成シンポジウムは、春と秋の年2回、平日の2日間にわたって開催され、有機合成化学を中心とする最先端の研究成果が報告されるとともに、熱い議論が交わされる学会です。昨年から春のシンポジウムを東京以外の場所で開催することになり、第111回の岡山での開催に続き、2回目の地方開催となる今回の第113回シンポジウムは、東海支部の協力のもと、6月6日(水)〜7日(木)に名古屋大学坂田・平田ホールで開催されました。今回のシンポジウムでは、口頭発表を2種類(発表時間が15分と20分)に分け、より多くの研究成果を発表していただくことができました。全国各地から212名が参加登録し、企業冠賞受賞講演2演題に加え、口頭発表35件、ポスター発表69件の研究発表が行われ、2日間にわたり白熱したディスカッションが行われました。
一日目
東海支部長の岩佐精二先生(豊橋技科大院工) の開会挨拶を皮切りに、シンポジウムがスタートしました。今回のシンポジウムの座長は、主に協会理事および全国の各支部長が務め、発表者には通常の学会の口頭発表以上の緊張感が見られました。新規反応の開発に関する7件の口頭発表では、初日の午前にも関わらず非常に活発な討論がなされました。続いて、ポスター発表35件のショートプレゼンテーションが行われました。発表時間は1人1分でしたが、発表者の熱意が簡潔にまとめられた研究成果とともに聴衆に伝わってきました。昼食後のポスターセッションでは、それぞれのポスターの前に質問者が人だかりを作り、雨天と裏腹に会場は熱気に包まれ、45分間の発表時間はあっという間に過ぎてしまいました。ポスターセッションでの熱気の余韻は冷めやらず、その後の13件の口頭発表でも終始盛んな議論が交わされました。
ミキサー
一日目の発表終了後、発表者と参加者の交流を目的としたミキサーが開催されました。東海支部長の岩佐精二先生(豊橋技科大)と事業委員長の林亮司氏(東レ)からご挨拶いただき、多くの参加者のおかげで今回のシンポジウムを成功させることができた、と感謝の意が述べられました。続いて石原一彰先生(名大)から乾杯のご発声をいただき、春のシンポジウムの地方開催の経緯および東海支部学生会員の増加についてお話しいただきました。演者を囲み講演会場では聞けなかった質問をする人や、旧交を温める人など会場は大いに盛り上がり、ミキサーの時間はあっという間に過ぎてしまいました。
二日目
昨日の雨が止み、暑くもなく寒くもない過ごしやすい曇り空の中、二日目の口頭発表が始まりました。一日目と同様に、午前中は口頭発表とポスター発表のショートプレゼンテーションが行われ、会場内の熱気のせいか、昼休みには空は晴れ上がっていました。午後のポスターセッションでは、一日目よりも更に熱い議論が交わされ、発表時間が終わってからもディスカッションを続けている発表者と質問者があちこちに見られました。続く口頭発表でも白熱した議論は続き、会場は終始熱気に包まれていました。
受賞講演
平成29年度有機合成化学協会・【シオノギ・低分子創薬化学賞】
「生物活性天然物の効率的合成のための新合成法論の開発」
(名大院生命農)西川俊夫
平成29年度有機合成化学協会・企業冠賞受賞講演:【東ソー・環境エネルギー賞】
「有機分子の触媒的脱水素化を基軸とする効率的有機合成ならびに水素貯蔵・水素製造」
(京大院人間・環境)藤田健一
西川俊夫先生からは、多くの環構造と官能基が密集した生理活性天然物を、複数の反応が連続的に進行するカスケード反応を用いて組み上げる、非常にエレガントな合成についてご講演いただきました。鎖状化合物から複数の環構造を一挙に構築する手法は、多くの生理活性化合物の合成に拡張できることが期待されました。
藤田健一先生には、イリジウム錯体を触媒とする有機分子の脱水素化と水素貯蔵・水素製造について、研究背景からわかりやすくお話しいただきました。水素エネルギーの実用化はすぐそこまで来ていると実感する、非常に貴重なご講演を聴かせていただくことができました。
ポスター発表
- ・「(L)-アミノ酸誘導体-銅(II)触媒によるキラルα-ハロアミドのエナンチオ選択的分岐合成」
(名大院工)◯西村和揮、Yanzhao Wang、小倉義弘、山川勝也、石原一彰 - ・「アントラキノン-キサントン複合型天然物アクレモキサントンAの合成研究」
(東工大理・京大薬)◯中小原大志、平野陽一、瀧川紘、鈴木啓介 - ・「多置換キュバンの選択的合成法の開発」
(京大院工)◯加藤結美、松原誠二郎 - ・「テトロドトキシンの推定生合成中間体の合成研究」
(名大院生命農、東北大院農)◯宮坂忠親、安立昌篤、杉本敬太、山下まり、西川俊夫 - ・「ビナフチル骨格を有するニッケルおよび亜鉛錯体の合成と二酸化炭素固定化反応への展開」
(岡山大院自然科学)高石和人、〇山田侑弥、Nath Bikash Dev、前田千尋、依馬正 - ・「ヒドロキシルアミン類の反応性を活用したサプトマイシンHの全合成研究」
(東工大理)◯志村純、安藤吉勇、鈴木啓介 - ・「アニオン捕捉型超分子キラルブレンステッド酸触媒の開発と応用」
(名大院工)〇鈴木隆平、大松亨介、大井貴史
表彰式の後、閉会の挨拶が述べられ、本シンポジウムは盛会のうちに幕を閉じました。
次回の第114回有機合成シンポジウムは、11月6日(火)、7日(水)の両日、早稲田大学国際会議場で開催予定です。多くの方々のご参加をお待ちしております。
<シンポジウム事業委員>(横浜薬科大学) 庄司 満