イベント - 協会本部 –
第119回有機合成シンポジウム【開催報告】 終了しました
- 日時
- 2021年11月9日(火)~11月10日(水)
- 場所
- オンライン開催
- 主催
- 有機合成化学協会
共催 日本化学会、日本薬学会、早稲田大学理工学術院総合研究所
協賛 日本農芸化学会
開催報告
有機合成シンポジウムは、例年春と秋の2回開催される有機合成化学の最先端の研究発表の場となっております。特に秋のシンポジウムは例年早稲田大学国際会議場にて開催され、学生さんの参加も多く大変賑やかな懇親会もあり活発な議論の場となっています。昨年度はコロナ禍の中、秋のシンポジウムのみオンラインで開催されました。今年度春はハイブリッド形式での開催が実現し、この秋も対面開催が検討されましたが、イベント開催における社会情勢を鑑みて今回もオンライン開催となりました。全国各地から多くの皆さんが参加登録し、2日間にわたり口頭発表(質疑応答含め20分)23件とポスター発表(ショートプレゼン2分有り)14件の研究発表と白熱した討論がなされました。
◆一日目
事業委員長の須貝威先生の力強いお言葉で始まった第119回シンポジウム1日目は、口頭発表14件ののち、14件のポスター発表者のショートプレゼンテーションが行なわれました。
秋のシンポジウムでは口頭発表者がポスター発表も行うのが通例ですが、今回は口頭発表のみのプログラムとなり、15分の発表時間に思いを込めた密度の高い内容の発表が続きました。学生さんもオンライン発表を熟知しており、スムーズに発表と質疑応答が行われました。また、発表内容も多岐に渡り、魔法のような金属触媒の反応性を活かした合成反応に加え、硫黄、フッ素、ホウ素、窒素、リンなど身近な非金属元素の特性を利用した巧みな反応、合成が目立ちました。
◆二日目
前日と同様に、Zoomを利用した口頭発表から始まりました。午前中は、遷移金属触媒を用いた新規反応開発や天然物の全合成に関する5件の演題が発表され、活発な議論が行われました。
昼休憩終了後、14件のオンラインポスターセッションが、oVice(オヴィス)を使用して行われました。oViceではバーチャル空間を利用したコミュニケーションが可能で、隣のポスター発表の声が聞こえず、発表者とのディスカッションに集中することができました。バーチャル空間なので、1つのポスターに大人数が詰めかけても圧迫感がなく見ることができるのも、oViceの利点です。参加者各自が発表原稿を拡大できるように設定されており、また、ポスターから離れた場所で近くにいる参加者同士が議論できるなど現実のポスター会場に近い環境が整い、発表者および参加者間のディスカッションが、80分にわたり大いに盛り上がりました。
ポスターセッション終了後は、Zoomを用いた4件の口頭発表が行われ、生理活性化合物の全合成や新規反応に関する多くの討論が行われました。
◆表彰式&閉会式
実行委員長の山口潤一郎先生から、4件の口頭発表に優秀発表賞が、3件のポスター発表に優秀ポスター賞が授与されました。受賞者の挨拶では、長いコロナ禍で苦労して実験した中での受賞の喜びなどが語られ、主催者一同、学会を開催した充実感に包まれました。
・優秀発表賞 [発表番号順]
O-2 「ニッケル触媒による異なる芳香族分子間のアリール交換反応」 (早大院理工)◯一色遼大、黒澤美樹、稲山奈保実、武藤慶、山口潤一郎
O-8 「ホウ素の空軌道を立体的に保護した芳香族ボロン酸エステルの開発」 (阪大院薬、岐阜薬大)◯岡直輝、赤井周司、佐治木弘尚、井川貴詞
O-11 「N-ヘテロ環状カルベン触媒を用いたスチレンの求核的活性化:有機触媒による分子内溝呂木-Heck反応」 (阪大院工、ICS-OTRI)◯伊藤空、藤本隼斗、鳶巣守
O-12 「求電子的アミド化反応を基盤としたロバタミド類の合成研究」 (慶大理工)◯番匠祥奈、長島義之、岡田勇斗、中筋瑛子、安井蒼一郎、中田圭祐、林香那、佐藤隆章、千田憲孝
・優秀ポスター賞 [発表番号順]
P-2 「パラジウム触媒によるブロモアレーンの脱芳香族的アザスピロ環化反応」 (早大院先進理工)◯上部耀大、柳本愛華、武啓堃、武藤慶、山口潤一郎
P-3 「マイクロ波加熱を利用したフロー式多環芳香族化合物合成法」 (岐阜薬大)◯寺西航、大鳥清也、山田強、佐治木弘尚
P-9 「ペプチドのN末端修飾を志向した1,3-双極子環化付加反応」 (中央大院理工、中央大理工)◯町田陽佳、金本和也、福澤信一
続いて、副事業委員長の長澤和夫先生(東農工大院工)から、次回の第120回有機合成シンポジウムは2022年6月下旬に北海道大学を会場として開催される予定であることがアナウンスされ、シンポジウムは盛会のうちに終了しました。
今回のシンポジウムでは、視聴者は大学関係者だけではなく企業の研究者も多くみられました。有機合成をキーワードに様々な立場の研究者が集う会として、オンライン開催が奏功した点と言えます。今後の対面再開が待たれますが、オンラインの良さを取り入れながら距離を感じずに議論できるシンポジウムの新しい形に工夫したいところです。
開催報告: 2021年度事業委員会委員
慶應義塾大学 犀川 陽子
横浜薬科大学 庄司 満