イベント - 協会本部 –
平成30年度 前期(春季)有機合成化学講習会プログラム 終了しました
テーマ「有機合成の新潮流 ― 反応剤・反応・創薬 新たな挑戦 ―」
第1日目【6月13日(水)】
開会挨拶 12:55~13:00 ※下記時間は質疑応答を含まない/敬称略
1.「日進月歩の芳香族化合物脱カルボニル型変換反応」(13:00~13:50)
(早稲田大学先進理工学術院教授)山口 潤一郎
クロスカップリング反応などにおいて、カルボニル化合物が、安価で入手容易な代替カップリング剤(求電子剤)として注目を集めている。特に芳香族化合物の場合、カルボン酸を現状では用いることができないため、芳香族カルボン酸誘導体(エステル・アミド)などが用いられる。遷移金属触媒下、結合活性化/脱カルボニル化を伴い、形式的にエステルアミドが脱離基として反応するユニークな反応である。本講習では、最近発展著しい遷移金属触媒を用いた芳香族化合物の脱カルボニル型変換反応を紹介する。
2.「高反応性ホウ素化合物の化学:不安定化学種取り扱い入門」(14:05~14:55)
(名古屋大学大学院工学研究科教授)山下 誠
周期表で炭素の左に位置するホウ素を含む分子は有機合成化学において広く利用されている。通常使用される有機ホウ素化合物は、その分子構造に少し摂動を与えることで、合成化学の常識とは異なる反応性を示すことがある。本講習では新奇なホウ素含有化合物の特徴的な性質について我々の最近の研究を紹介すると共に、有機合成化学の現場における不安定化学種の取り扱い方法の入門編についても紹介する。
3,「核酸医薬開発へ向けた技術構築への挑戦」(15:10~15:50)
(協和発酵キリン(株)研究開発本部研究機能ユニット核酸医薬研究所主任研究員)山本 潤一郎
核酸医薬としてsiRNAやASOは標的遺伝子の特異的な発現抑制が可能であり、低分子医薬や抗体医薬に次ぐ創薬モダリティとして注目されています。そこで、本講習会においては、従来の低分子医薬で用いられてきた創薬手法を核酸医薬にも展開し、SBDDに基づくsiRNAアナログの分子設計や誘導体合成による高活性化、およびプロドラッグ化の研究事例を紹介します。
**ブレイク20分**
4.【平成29年度有機合成化学協会賞「技術的なもの」受賞講演】(16:25~17:05)
「新規酸化剤『次亜塩素酸ナトリウム5水和物 (SHC5)』の工業化と酸化反応への応用」
(日本軽金属(株)化成品事業部蒲原ケミカル工場開発部グループリーダー)岡田 倫英
次亜塩素酸ナトリウム水溶液はクリーンかつ安価な酸化剤として広く知られているが、工業的に有機合成反応に使用する場合、希薄溶液であるため製造効率が悪く、また反応性も低いという課題があった。そこで当社は、これらの課題を解決すべく、高濃度で高い酸化力を持つ次亜塩素酸ナトリウム5水和物(SHC5)の工業的製造法を確立し、アルコール化合物や硫黄化合物等の酸化反応に対して有用な酸化剤であることを示した。本講習ではSHC5と従来品水溶液との反応性の違いを中心に有機合成への適用例を紹介する。
5.「生きている動物内での創薬研究:生体内合成化学治療」(17:20~18:10)
(理化学研究所開拓研究本部田中生体機能合成化学研究室主任研究員)田中 克典
私達は、「生体内合成化学治療」と名付けた方法で、生きている動物内での生理活性分子の合成に挑戦している。従来のように、活性を持つ分子を体内に導入して、疾患の治療効果を検討するのではない。活性や毒性のない原料や試薬を体内に導入して、体内の特定の場所で時空間的に生理活性分子をピンポイントで創製し、その活性を発現させる。有機合成化学によってこれまでドロップアウトしてきた分子を見直す「分子ルネッサンス」である。本講習では最新の成果を含めた私達の「生体内合成化学治療」を紹介する。
★★イブニングセッション(於;ロビー)★★(18:30~20:00)
第2日目【6月14日(木)】
6.「マイクロフローリアクターを用いる高速・高効率アシル化反応」(9:45~10:35)
(東京工業大学科学技術創成研究院化学生命科学研究所准教授)布施 新一郎
微小な流路を反応場とするマイクロフロー合成法を、生産効率向上のために単にバッチ合成法の代替として用いることでも多くの利益を得られるが、演者らはバッチ合成法では「制御不可能」な高反応性活性種をマイクロフロー法で活用することにより新しい化学(価値)を創造できるのではないかと期待して研究を続けてきた。本講習では、特にペプチドおよび関連化合物に焦点を当て、その重要性と従来合成法の問題点、そして演者らが開発してきた高反応性活性種を駆使する古くて新しいマイクロフローアシル化法の開発について紹介する。
7.「連続生産の社会実装への取組み」(10:50~11:30)
((株)高砂ケミカル代表取締役社長) 齊藤 隆夫
日本の化学合成産業は、低コスト国の中国、インド等の台頭をうけ、熾烈なコスト競争に巻き込まれ苦境に立たされている。また、自然災害のリスクや労働人口の減少により従来の生産モデルの崩壊は必至である。国際競争力の再興、合成事業復活の鍵は40%を超える省人化に対応できる全自動連続生産の導入に掛かっている。本講習では、多品種少量生産に対する連続生産の実装への取り組みについて述べる。
☆昼食&ランチョンセミナー&展示
ランチョンセミナー
・ロックウッドリチウムジャパン株式会社
・ユミコアジャパン株式会社
8.「アルコールを効率的かつ選択的に酸化するために」(13:00~13:50)
(名古屋大学大学院創薬科学研究科講師)澁谷 正俊
アルコールからカルボニル化合物への酸化は,有機合成の基本となる極めて単純な反応である。しかしながら、反応の実施にあたっては危険性や廃棄物の環境毒性、あるいは副反応等の問題に直面することが意外に多い。 我々はオキソアンモニウム塩を触媒活性種とするアルコールの酸化反応の有用性に着目し、触媒構造や触媒反応系を適切に設計することによって、様々な酸化反応が効率的に進行することを見出してきた。本講習では、それらオキソアンモニウム塩を触媒活性種とする酸化反応について紹介する。
**ブレイク20分**
9.【平成29年度有機合成化学協会賞「技術的なもの」受賞講演】(14:25~15:05)
「HIV-1インテグラーゼ阻害剤ドルテグラビルの効率的合成法の開発」
(塩野義製薬(株)CMC研究本部製薬研究センタープロセス化学部門長)安酸 達郎
ドルテグラビルは HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の増殖にかかわるインテグラーゼの阻害を作用機序とする抗HIV感染症薬である。創薬段階での合成法は収率や反応条件の点で大量合成への適用は困難であったことから、スケールアップ可能な合成法の開発が必須であった。検討の結果、以下の二つの合成法、すなわち原料マルトールの酸化と気液反応(Heckカルボニル化)を鍵反応とする合成法、および原料をゼロベースで見直し短工程かつ高収率で原子効率に優れた合成法を確立した。本講習では合成法開発のコンセプトとその詳細について紹介する。
10.「フローマイクロリアクターを用いた超高速反応による精密合成」(15:20~16:10)
(京都大学大学院工学研究科講師)永木 愛一郎
最近、マイクロ構造をもつフロー型の反応器であるフローマイクロリアクターが合成反応に利用できるようになってきた。本講習では、その特性を生かし、高い選択性で反応時間秒~ミリ秒オーダーの反応の精密制御を実現することにより、フラスコでは達成困難な超高速合成の展開が可能となる、その原理とともにその最近の活用例について紹介する。
閉会挨拶 16:25