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シニア懇話会「第22回ゆうごう会」(大阪開催)【開催報告】  終了しました

日時
平成29年05月30日(火)午後3時から6時30分頃まで 【終了しました】
場所
大阪駅前第一ビル地下1階「キングオブキングス」 TEL.06-6345-3100
主催
有機合成化学協会
交通
JR大阪駅徒歩5分、地下鉄四ツ橋線・終点『西梅田駅』より徒歩2分
参加定員
30名(先着順)
参加費
5,000円

話題提供

「アセチレン合成触媒の発展を辿る」
(大阪市立大学名誉教授/本会名誉会員)薗頭 健吉 先生

1975年にアセチリド錯体合成用銅触媒とクロスカップリング用パラジウムホスフィン錯体触媒との組み合わせで得られた共役アセチレンの合成触媒が1990年代のエンディイン系抗ガン剤の研究や2000年代の光電子材料の開発研究に多用されて発展した経過を辿る。

懇親会
午後4時45分から6時30分頃、飲食と質疑談論
※有志による二次会、三次会は無限

報告記

日時:平成29年5月30日(火)

翌日(31日)の関西地方は雷と風雨で大荒れであったが、幸いにして、当日(平成29年5月30日)は、爽やかな日であった。その午後3時から、大阪駅前第一ビル(キングオブキングス)で、「第22回ゆうごう会」が行われた。大阪では5回目であり、22名の参加者であった。
今回の話題は、有機化学協会平成28年度有機合成化学特別賞を受賞された大阪市立大学名誉教授薗頭健吉先生による「アセチレン合成触媒の発展を辿る」であった。所謂、金属触媒研究の歴史の一端を語り合う場を薗頭先生に提供していただいた。
司会は、田井晰先生(兵庫県立大学名誉教授)にお願いした。田井先生は、薗頭先生とは大阪大学入学から大学院理学研究科博士課程修了に至るまでの間、同じ道を歩まれ、薗頭先生の全てを知る間柄である。共に86歳でお住まいも近くで、若さの競い合いの上でも、最適の司会者であった。
薗頭先生のご紹介の中でも、いまもなお、ドイツ語新聞を読む会が続いているお話は印象的であった。ご紹介の結びは、「常に誠実で控えめで、笑顔の絶えない人格者である。」であった。さらに、「本来はノーベル賞をもらってもおかしくないが、控えめがノーベル賞を逃す結果になった。」とのお話も印象的であった。

その後、約1時間半にわたって、薗頭先生のお話があった。感動的であった点を列記したい。

  • 薗頭先生の恩師は中川正澄先生。中川先生は真島利行先生(東北帝国大学教授、東京工業大学教授、北海道帝国大学教授を経て大阪帝国大学教授・総長といった要職を歴任された。また、ウルシオールの構造決定で優れた研究成果を上げられ、黒田チカ、赤堀四郎、野副鐡男、星野敏雄、小竹無二雄、村橋俊介等の多くの優れた有機化学者を育てられた)の流れをくむ有機化学者である。日本の化学史を垣間見るお話しを昔の写真と共にご紹介いただいた。
  • 薗頭先生ご自身もこの真島門下の恵まれたミーム(人から人に伝達することによって進化する優れた研究環境遺伝子)の一端を受け継げたかと思うとのお話もあった。
  • 阪大理学研究科博士課程修了後、1961年~80年は阪大産研の萩原信衛教授のもとで研究を続けられ、途中66年から67年にかけミュンヘン工科大のE.O.Fischerのもとで学ばれた。1981年から95年までは大阪市立大学工学部教授。
  • そうそうたる先輩の薫陶を受けて、当時からマイナー分野であったアセチレン化学に取り組むことになった。そこから、1975年に「薗頭カップリング」(「薗頭反応」や「薗頭-萩原カップリング」とも呼ばれる)が誕生した。この反応が今も多くの方々に使っていただいていることを知り、研究者冥利に尽きるとも話された。
  • 研究対象をアセチレンに限定していたので、二重結合の化合物であれば、もっと広く使われたと思う。これが、ノーベル賞候補で終わったのであろうと、笑みを浮かべた薗頭先生の回顧談であった。
    しかし、具体的には、アセチリド錯体合成用銅触媒とクロスカップリング用パラジウムホスフィン錯体触媒との組み合わせで得られた共役アセチレンの合成触媒が世界の注目を浴び、その後、基礎研究にとどまらず、エンジイン系抗生物質(抗菌・抗ガン剤)の合成や有機ELや太陽電池といった電子材料の実用生産にも多用されてきたことに対して素朴な喜びを語られた。
  • クロスカップリング反応は日本の得意とする反応であり、多くの日本人研究者の名前の付いた人名反応(Heck-溝呂木反応、鈴木-宮浦カップリング、根岸カップリング、檜山カップリング、熊田-玉尾カップリング等)として広く知られている。その一端のご紹介もあった。

ここで、一幕を閉じ休憩に入る前に、学部(工学部)が異なるが、同期生である園田昇先生(大阪大学名誉教授)から、「上記の研究成果が、昨年の有機合成化学会の特別賞受賞にもつながったものであり、お祝い申し上げたい。」との祝辞が述べられ、全員が拍手喝采でお祝いする場面があった。さらに、園田先生は、本当はノーベル化学賞であってもよかったとの、お言葉も付け加えられた。再度、大きな拍手を誘った。

これより飲食を伴う、第2部の談論会となった。参加者全員が、薗頭先生への質問も含めて、スピーチのリレーが始まった。スピーチの中で、共通話題となった事柄を列記しておきたい。

  • 「何故、薗頭先生がノーベル化学賞受賞者に選ばれなかったのか??が圧倒的な質問であった。
  • ご回答者の薗頭先生は、終始、例の笑顔で聞き役に徹しておられた。
  • 薗頭先生に成り代わって、下記のようなコメントがあった。―――薗頭先生が、控えめ過ぎたのではないか? 欧米人並に自己PRすべきではなかったか? 日米間の政治的力も絡んだのでは。大阪市大、福井工業大学に籍をおいていた先生方からは、ノーベル賞選考時期においては、何年間も報道陣がかけつけ、賑やかな場面が何回もあった。
  • 沈黙を保ってこられた薗頭先生からは、最後に「有用性の多くないアセチレンを研究対象に限定し、利用分野が限定されていたと思う。」と上述と同じ事を答えられた。特に、残念がられることもなく、欲を越えた爽やかなお言葉にも感動を覚えた。
  • 加えて、「控えめな先生」、「誠実な先生」、「穏やかな先生」、「尊敬できる先生」などの想い出話しが飛び交った。
  • 多くの方々から、信頼、信用され、まだまだお元気で続けられる薗頭先生の人生劇は、出席者全員のお手本とも思われた。

今回の会合は「薗頭先生」、「園田先生」、「田井先生」の86歳のご長老が、70代のわれわれよりはるかにお元気で、記憶力も、会話力も勝っていることを、羨ましく感じると共にお手本にできる喜びもあった。これが、「ゆうごう会」の妙味であり、また、参加してみたい気になるのであろうと思った。

第22回報告記
世話役:後藤達乎、松本和男 記

ゆうごう会とは

本会シニア世代個人会員を対象にした懇話会で、「少し学び(知る)、知的に(遊ぶ)、それを心でつなぎ(和の心)、誰でも気楽に参加し、楽しめる会」を趣旨とし、会の名称も、有合協と和の精神(融合)を意味する「ゆうごう会」と命名したものです。

このほか、当日ご参加を頂いた方々は以下の通りです(順不同)
園田昇先生(阪大名誉教授)、鴻池敏郎氏(大阪合成有機化学研究所)、竹平喜和氏(オーダ化成)、濱中佐和子先生(元関西大)、後藤達乎氏(関西ゆうごう会お世話役 / 元ダイセル)、松本和男氏(関西ゆうごう会お世話役 / ナールスコーポレーション)、西口郁三先生(関西ゆうごう会お世話役 / 科学技術振興機構)の各先生です。

お問い合わせ

〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-5 化学会館
公益社団法人有機合成化学協会「ゆうごう会」係
(電話 03-3292-7621)(FAX 03-3292-7622)
e-mail : tokyo.email.ne.jp