イベント - 協会本部 –
シニア懇話会「第25回ゆうごう会」(東京開催)【開催報告】 終了しました
- 日時
- 平成30年6月18日(月)15時~18時30分頃【終了しました】
- 場所
- 化学会館6F601A会議室[千代田区神田駿河台1-5]
- 主催
- 有機合成化学協会
話題提供(15:00~16:30頃)
「サプリメント活用による薬に頼らない健康法」(株)イムダイン代表取締役社長 本多伸吉 先生
ガン、糖尿病、アレルギーなど慢性疾患に対して特効薬はまだまだ不十分で、予防することが最善策です。
これらの疾患の背景には酸化ストレスと免疫バランスの乱れがあると考えています。演者は健康食品分野において天然素材から有効成分の研究に従事してきて、上記の疾患の予防のためには、たとえば酵素β-グルカンによる自然免疫力の向上と、水素吸蔵カルシウムや天然ハーブエキスによる活性酸素対策を講じることでガン、アレルギーを予防し、育毛効果や声質の改善も可能性があることを見出しました。
報告記
日時:平成30年6月18日(月)
参加者13名
本会シニア会員向けの行事である「ゆうごう会」が平成30年6月18日(月)化学会館6階会議室で開催されました。ゆうごう会は、主として東京あるいは大阪で年に2回ほど開催されています。今回は本多伸吉博士((株)イムダイン代表取締役)をお招きし、「サプリメント活用による薬に頼らない健康法」という演題でご講演いただきました。
本多博士は東京工業大学大学院生命化学専攻を修了された後、製薬企業において約20年間、研究開発に携われました。そして、2002年に (株)イムダインを起業し、代表取締役として現在に至っておられます。「イムダインImmudyne」の社名はImmune(免疫)とDynamism(活力)に由来し、「免疫力こそが、美と健康の源であるという考えのもと、人間が本来持っている自然治癒力を最大限に引き出し、美しく健やかな生活をサポートする」という気持ちを込めておられるそうです。疾病や症状の原因の考察から適切な評価系を構築し、特に天然素材から有効成分を見い出し、いくつもの新しいサプリメントを開発されてこられました。今回の講演では、特にがん、アレルギー、育毛、声を対象としたサプリメントについて具体的なデータを含めてご紹介いただきました。
がんに関しては酵母由来の免疫系サプリメント(β-グルカン)と抗酸化サプリメントの2つについてお話しされました。キノコや大麦に含まれるβ-グルカンが免疫機能を高めることは以前から知られていますが、本多博士はパン酵母に着目されました。パン酵母由来のβ-グルカンはβ-1,3/1,6-結合をしており、キノコ由来と比べて極めて高純度のβ-グルカンを得ることができます。免疫系サプリメントにはさらに天然ハーブ、α-リポ酸、亜鉛などを加えているそうです。抗酸化サプリメントの主役は水素を長時間放出する水素内包化サンゴカルシウムです。このものが身体の中で水素を発生し続けていることを実験的に確認することから研究はスタートしました。水素水ブームが一時巻き起こりました。水素水でご飯を炊くとか水素水のお風呂とか科学的におかしなことが取りざたされ、狂騒的なブームは去ったようですが、水素水がヒドロキシラジカルを消去することは事実です。しかし、生体内の活性酸素は他にもスーパーオキサイド、過酸化水素、一重項酸素など様々な化学種が存在します。水素水はヒドロキシラジカルを消去しますが、他の活性酸素には効果が認められません。そこで、レスベラトール(一重項酸素を消去)、メロングリソディンや亜鉛(抗酸化酵素を活性化)と混合したサプリメントを開発しました。このサプリメントを2週間飲むと酸化ストレスのマーカーが減少し、炎症の指標であるCRPも減少することが確認されました。
もう一つ、参加者の関心を引いたのが宮古島でムツウサ(学名ピデンス・ピローサ)と呼ばれている草から調製したサプリメントでした。ムツウサはもともと熱帯アフリカ原産の帰化植物で、中南米やアフリカでは野菜や民間薬として食されてきた知られざる薬草だったそうです。抗炎症作用が認められ、アトピー性皮膚炎をはじめ何例もの臨床例が紹介されました。このムツウサを原料としてお茶、錠剤、化粧品へと展開されています。興味深いのは、ムツウサは宮古島だけでなく近くの島や沖縄本島(サシグサと呼ばれているそうです)でも生息しているそうですが、宮古島のムツウサだけが抗炎症作用を示すそうです。ムツウサはフラボン類をたくさん含んでいるそうで、石灰岩を多く含む宮古島の特殊な土壌がこのような成分の違いをもたらしたものと思われます。質疑応答で宮古島のムツウサは乱獲されるのではないかという質問が出ました。宮古島では、サトウキビだけでなくムツウサも有用な資源として考えており、これからも安定的に供給していく体制がとられているそうです。
続いて発毛に関するサプリメントを紹介されました。発毛の仕組みから、毛包幹細胞を活性化する成分を130種以上の植物から探索した結果、リンゴが効果的であることを見い出しました。リンゴに含まれているプロシアニジンがその活性成分であることがわかり、さらに大きなリンゴも未成熟の小さなリンゴも活性成分の量は変わらないそうです。そこで、モンゴルで未成熟果リンゴを採取し、サプリメントの主成分としたそうです。多くの改善例が紹介され関心を呼びました。質疑応答で、サプリメントを飲まなくなると元に戻るということが残念でした。
最後に声をよくするサプリメントについて紹介されました。抗酸化作用物質、神経保護作用物質、抗菌作用物質などを配合したサプリメントを開発し、歌手など声が専門の方を対象とした検討がなされました。その結果、このサプリメントを飲むと声域が拡がったり、発声の持続時間が延びたりという効果が認められたそうです。
参加者のほとんどは現役を退いた方が多いですが、適当に化合物の名前、化学構造式がちりばめられた本多博士のご講演を楽しまれたことと思います。
講演の終了後、化学会館に隣接する明治大学のレストランに移動し、最年長の辻二郎先生(東工大・栄誉)の乾杯のご発声に続いて懇親会が催されました。本多博士がお話しされた疾病、症状はいずれも関心の高いものなので、懇親会でもおおいにサプリメントの話題で盛り上がりました。
第25回報告記(文責・小林進)
ゆうごう会とは
本会シニア世代個人会員を対象にした懇話会で、「少し学び(知る)、知的に(遊ぶ)、それを心でつなぎ(和の心)、誰でも気楽に参加し、楽しめる会」を趣旨とし、会の名称も、有合協と和の精神(融合)を意味する「ゆうごう会」と命名したものです。
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