イベント - 協会本部 –
2020年度 有機合成化学講習会プログラム[オンライン開催 11月19日~20日] 終了しました
- 日時
- 2020年11月19日(木)~20日(金)
- 場所
- zoomウェビナー形式
- 主催
- 有機合成化学協会 / 共催:日本化学会、日本薬学会 / 協賛:日本農芸化学会
テーマ「おさえておきたい最新の有機合成 ~新規反応開発から実用展開まで~」
[※2020年度前期(春季)有機合成化学講習会の延期-オンライン開催となります]
第1日目【11月19日(木)】6月22日
9:55~10:00 開会挨拶
※下記の講演時間には質疑応答時間は含まれておりません。/敬称略
1. 「特殊ヘテロ環の化学」(10:00~11:00)
((公財)微生物化学研究会微生物化学研究所有機合成研究部主席研究員)熊谷直哉
新奇分子骨格のデザインは有機合成化学者に広く許された自由な思考実験であり,新たな構造的特徴が分子機能を直接的に記述する事例も多く,アイデアから実践的価値を生み出す源泉にもなっている。本講習では,我々の研究グループで取り組んでいる新奇ヘテロ環化合物に関する研究展開について概説し,その合成上の難点や新奇化合物の機能について紹介する。
2.「有機硫黄化合物を活用する有機合成反応」(11:10~12:10)
(京都大学大学院理学研究科教授)依光英樹
UmpolungやSwern酸化など,有機硫黄化合物は実に個性にあふれ魅力的な反応性を示す.一方で,悪臭や触媒毒性,原子効率の悪さから今日では有機合成では敬遠されることも多い.演者らはこうした欠点にあえて目をつぶり,有機硫黄化合物を積極的に使って新反応の開発に取り組んできた.本講習では,まず有機硫黄化合物の基本的性質や反応について概説する.ついで,我々の開発した新形式Pummerer型反応と炭素-硫黄結合の切断に基づくクロスカップリング反応を紹介する.現代有機合成の視点から有機硫黄化学の魅力を再発見する機会となれば幸いである。
*昼休憩(60分間=12:20~13:20)
3,「天然物合成における紆余曲折とそこから学ぶこと」(13:20~14:20)
(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)滝川浩郷
そもそも、研究が当初の計画通りに進むことは極めてまれである。天然物合成においてもまた然りで、様々な困難に行く手を阻まれ、我々は望まぬ紆余曲折を体験する。ただし、それらの困難を乗り越えるための思考・努力が合成経路に飛躍的改善をもたらしたり、新たな戦略を見出すきっかけとなることもしばしばである。決して特別な話ではないが、演者が体験した天然物合成における“ビフォーアフター”を紹介させていただく。
4.「触媒制御による高化学選択的アルコール酸化反応」(14:30~15:30)
(東北大学大学院薬学研究科教授)岩渕好治
アルコールの酸化反応は、カルボニル化合物を得るための直截的な方法として汎用される。しかし酸化剤によっては毒性・爆発性等が懸念され、多官能性の基質では化学選択性の制御が問題となり、大量合成への適用は回避される傾向にあった。本講習では、前述の問題に対する解決策として期待される、触媒制御によるアルコール酸化の最新のノウハウとヒントを紹介する。
*ブレイク(10分間=15:40~15:50)
5.「キラル分子科学の再認識」(15:50~16:50)
(九州大学先導物質化学研究所教授)友岡克彦
分子キラリティーは分子特性にかかわる重要因子の一つであり、これまでに膨大な研究がなされてきた。 それらの主たる対象は炭素中心性不斉を有する分子(キラル炭素分子)であった。これは、キラル炭素分子が天然界に豊富に存在し、生命現象の根幹を成していることから当然の帰結であろう。しかしながらキラル分子はキラル炭素分子に限られるものではなく、他の要因に基づくキラル分子も数多く存在する。本講習ではキラル炭素分子と似て非なる特性を有する「キラルケイ素分子」および、動的なキラリティーを有する「面不斉ヘテロ中員環分子」について詳述するとともに、光学活性なキラル分子を「光学分割や不斉合成に頼らずに得る方法:DYASIN(ダイアシン)」についてもご紹介したい。
第2日目【11月20日(金)】6月23日
6.「二次性副甲状腺機能亢進症治療薬 エボカルセトの創製」(10:00~10:40)
(田辺三菱製薬(株)創薬本部 免疫炎症創薬ユニット主幹研究員)宮﨑 洋
創薬研究の成功事例として、エボカルセトに関する研究開発内容を紹介する。エボカルセトは、当社と協和キリン株式会社の共同研究下で創製されたベストインクラスのカルシウム受容体作動薬である(2018年製造販売承認取得、商品名:オルケディア®)。本剤は、維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者の副甲状腺ホルモン濃度等を低下させて管理目標値達成に寄与すると共に、先行剤の欠点である上部消化器症状に対する副作用を軽減する。エボカルセトの研究開発の経緯に加えて、二次性副甲状腺機能亢進症に対する効果を概説する。
7. 「金属ナトリウム分散体(SD)の新規用途展開 有機合成化学への応用」(10:55~11:35)
((株)神鋼環境ソリーション新規事業推進部事業企画室課長)村上吉明
当社は金属ナトリウム分散体(SD)を用いてPCB処理を行ってきた。SDは金属ナトリウムを25wt%含みながらも危険物第4類第3石油類に該当し、かつシリンジでの滴下可能な、安全性、反応性に優れたナトリウムである。
ナトリウムに対しては危険な物質と言う印象を持たれている方が多いと思うが、適切に扱えば安全にハンドリング可能である。しかし、危険物第4類だからと言って雑に扱えば当然ながら危険も伴う。
本講習では、反応例に加えて操作に失敗した時の対処法(やって良いこと、いけないこと)を紹介する。
*昼休憩(70分間=11:50~13:00)
8.「コバレントドラッグの創薬有機化学」(13:00~14:00)
(九州大学大学院薬学研究院教授)王子田彰夫
コバレントドラッグはタンパク質と反応して、その機能を不可逆的に阻害する薬剤分子である。コバレントドラッグ開発においては、緻密な分子デザインに基づいて標的タンパク質に対する高い反応特異性を達成することが重要である。近年、高い標的特異性を可能とするコバレントドラッグの反応化学研究がさかんとなっている。本講習では、ケミカルバイオロジーの手法を用いたコバレントドラッグ有機化学の開拓と創薬応用について、我々の研究例を中心として紹介を行う。
*ブレイク(10分間=14:15~14:25)
9.「タグ液相法によるペプチドの新規製造技術」(14:25~15:05)
(JITSUBO(株)代表取締役社長)金井和昭
現在、縮合・脱保護反応の繰り返しで合成されるペプチドの化学合成方法は固相法が主流である。タグ液相法(Tag-assisted Liquid-Phase Peptide Synthesis)は、液相法と固相法の長所を合わせ持つペプチドの新規製造技術として実用化が注目されている。タグの用途の探索時期からペプチドのプロセス開発において、ラボスケールおよび実生産スケールで直面した課題を、プロセスケミストリーの実用展開の一例として紹介する。
15:20 閉会挨拶